こんにちは!AI事業部エンジニアリングインターンの浅野です。
弊社は、2026年6月8日から12日にかけて開催された「2026年度人工知能学会全国大会(第40回)(JSAI2026)」にゴールドスポンサーとして協賛し、スポンサーブースの出展を行いました!本記事では、JSAI2026の現地の様子や弊社の展示ブース、個人的に気になった論文の紹介をします。
JSAI2026
JSAI2026は、人工知能学会(JSAI)が主催する日本最大級のAI学術イベントです。今年度は群馬県高崎市の「Gメッセ群馬」で開催され、過去最多の5,278名もの方が参加されました。正直なところ、会場が広大だったため、開催期間中はそこまでの大混雑を感じませんでした…(笑)。
今回の学会で特徴的だったのは、AIと他分野の融合です。2026年3月に弊社が参加した「NLP2026(言語処理学会第32回年次大会)」に比べて、AIと他分野(化学、物理、エンタメ、人文など)の融合に関する発表や展示が多い印象を持ちました。また、普段はソフトウェアの世界としか触れ合っていない私にとって、ロボットをはじめとする「Physical AI」に触れられたのは、とても魅力的でした。他の企業展示ブースでも趣向を凝らした展示が多く、思わず足を止めたくなるブースが多くありました。やはり、実際に目の前で物理的に動いているものを見ると、迫力が違います!

展示ブースの様子
弊社は今回、ゴールドスポンサーとして本学会に協賛いたしました。会期中の5日間、スポンサーブースには学生から企業の方まで多くの方にお立ち寄りいただきました。ブースでは、「NLP2026」で発表した弊社の研究活動内容や、経済産業省とNEDOが推進する生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」に関する展示を行いました。

特に今回は、「GENIAC」に第4期事業者として採択されてから初めての学会ということもあり、ポスターに気づいて足を止めてくださる方も多かったように感じます。一方で、今回の出展を通じて新たな課題も見えてきました。ありがたいことに弊社の「メンバー」を知ってくださっている方は多かった反面、我々の具体的な取り組みや、研究内容を深く知ってくださっている方は、比較的少ない印象を持ちました。技術力や研究内容をより多くの方に届ける積極的な発信活動を今後行っていきたいところです!
気になった論文
さて、今回もJSAI2026で発表された研究の中から、特に気になった論文を3つ紹介したいと思います。エージェント、文書理解、LLMとそれぞれテーマは異なりますが、どれも自身の現在の業務や技術的関心に突き刺さる内容です。
[4Yin-A-44] パラメータ間の距離に基づくLLMの事前学習データの寄与分析
本研究は、データの学習寄与を「パラメータ空間における最終パラメータへの距離の減少量」として定式化し、分析を行った論文です。最終パラメータを最善と仮定することで、特定の評価タスクに依存することなく、LLMの汎用的な能力獲得メカニズムを説明しています。検証では、学習中盤に難易度の高いテキストの寄与が大きくなることや、学習後半に向けてSTEM系ドメインのデータの寄与が増加するといった、学習段階に応じた推移が示されています。
学習の進行度に応じて効果的なドメインが遷移するという結果は、学習効率を高めるカリキュラム学習のデータ順序設計において非常に有益な指針になると感じました。何より面白いのは、このパラメータ間の距離に基づく分析手法が、特定の言語モデルの事前学習だけに留まらず、画像認識やマルチモーダルモデルなど、他の様々なタスクでも広く応用できそうな点です。個人的には、現在取り組んでいる文書理解の領域において、どのような学習データがモデルの能力獲得や構造理解に影響を及ぼしているのか、この手法を使って実験してみたいと思いました。効率的な学習が求められる分野において「何をどの順番で学ぶべきか」の基準になりそうで、このデータ設計を組み込んだ今後の研究の発展と、実際の学習プロセスの進化が楽しみです。
[2Yin-B-36] 複数タイプの投資家エージェントから成る人工市場を用いた企業価値評価
本研究は、財務指標や非財務指標を基に売買を行う6タイプ(計1,000体)の投資家エージェントを用いて人工市場を構築し、企業の多面的な価値形成メカニズムを分析した論文です。シミュレーション上の株価推移を実データに適合させる手法を用いており、株価騰落方向の再現精度(F1-score)の検証では、従来の統計モデルを上回る再現性能を達成しています。また、市場を主導する投資スタイルや、個別銘柄の背後にある投資家構成まで分解して可視化できる点も大きな強みとなっています。具体的には、「バリュー重視型」が65.2%、「配当重視型」が14.4%と、これら2タイプだけで市場全体の約8割を占有しているという相場の内部構造を定量的に明らかにしています。特に興味深い点は、非財務指標を参照する「ESG重視型」エージェントに関する分析結果です。市場全体におけるESG重視型の構成比率は3.9%と極めて低い値にとどまり、シミュレーション上の相場(2021年から2024年)を牽引していたのが社会性よりも直近の実利(割安性や配当)であったことが結果から裏付けられています。
業務でESGをはじめとする非財務情報を扱っていることもあり、それらのデータが実際の市場価格にどう影響を及ぼしていくのかという点には関心を持っています。通常はブラックボックス化されがちな市場の合意形成プロセスを、尺度の異なる非財務データを含めて定量的に再現した本アプローチは興味深いと思いました。特に2027年3月期以降に統一基準に基づくサステナビリティ情報の開示が本格化していく中で、過去の相場(2021〜2024年)を対象とした今回の結果から、制度が本格始動した後の市場にどのような変化が起きるのかが気になります。現在は3.9%にとどまっているESG重視型エージェントの比率や投資選好度が今後どう遷移していくのか、自分でも同様の手法を用いてシミュレーション実験をしてみたいと思いました。
[1Yin-A-39] LayoutLMv3の日本語事前学習に関する検証
シェルパのメンバーが共著した論文です。本研究は、文書理解領域のマルチモーダル事前学習モデル「LayoutLMv3」を日本語に対応させるため、日本語特化型のモデルを構築してその有効性を検証した論文です。既存のLayoutLMv3は英語や中国語向けに学習されており、日本語への適用は十分に進んでいません。そこで本研究では、テキスト側に日本語トークナイザを導入しています。さらに、非公開である画像トークナイザの代替として「BEiT-v2のVQ-KD」を採用し、国立国会図書館のWARP等から収集した約2,000万ページの日本語データを用いて事前学習を行っています。評価結果として、単語と視覚領域の対応を学習するWPA(Word-Patch Alignment)タスクでは、非常に高い正答率を達成しています。一方で、画像パッチを予測するMIM(Masked Image Modeling)タスクの精度は限定的な結果にとどまりました。これは、使用した画像トークナイザが自然画像向けであったために、文書画像との間における視覚構造のドメイン差が原因だと分析されています。
最先端の文書理解に関連するモデルの多くが英語や中国語のデータセットをメインに学習されている現状において、日本語の処理能力を強化する試みには強く共感しました。私自身も現在、文書理解タスクのモデル開発に従事しているため、日本語特有の表現や複雑なレイアウトへの対応には高い関心を持っています。今回の検証を通じて、自然画像とは本質的に視覚構造が異なる文書ドメインにおいて、やはり専用の画像トークナイザが必要不可欠であるという事実に深く納得しました。今後、文書特化のトークナイザに置き換わった際に、課題となったMIMタスクだけでなく、他のタスクに対してもどのような相乗効果をもたらすのかが非常に気になる発表でした。
おわりに
今回のJSAI2026への参加を通じて、多様な分野でAIに関する研究や社会実装が活発に行われていることを肌で実感しました。これからの技術の広がりに期待を抱く、非常に刺激的な5日間でした!
弊社の次回の学会活動として、2026年8月16日〜18日に仙台で開催される「第21回言語処理若手シンポジウム(YANS2026)」に、プラチナスポンサーとして参加予定です!現地へ参加される方は、ぜひ弊社のスポンサーブースへお気軽にお立ち寄りください。
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社では、ソフトウェアエンジニアおよびエンジニアリングインターンを募集しています。現在弊社ではNLP領域に加え、文書解析やVLM技術にも注力しています。興味ある方の応募をお待ちしております。