こんにちは!AI事業部エンジニアリングインターンの浅野です。
弊社は、2026年8月16日から18日にかけて開催された「第21回言語処理若手シンポジウム(YANS2026)」にプラチナスポンサーとして協賛し、研究発表とスポンサーブースの出展を行いました。本記事では、現地の様子や弊社の研究発表の概要、そしてスポンサー賞についてレポートします。
YANS2026
YANSは、自然言語処理分野の若手研究者や学生、技術者が集まる国内最大規模のシンポジウムです。今年は8月16日〜18日に仙台国際センターで開催されました。充実したプログラムはもちろん、ポスター会場やスポンサーブースも近く、気になる発表をスムーズに見て回ることができました。運営の皆様、ありがとうございました!
私自身は今回が初参加となりました。会場では、すでに完成された研究から今後の展開が楽しみなアイディアまで幅広く触れることができ、大変勉強になりました。また、自身のポスター発表でも直接フィードバックをいただき、今後の研究に向けた良いモチベーションになりました。

余談ですが、仙台グルメも最高でした!滞在は2日間でしたが、牛タンを2回も食べました…。
発表した論文
弊社からは、実務応用やモデル開発をテーマとした3件の論文発表を行いました。具体的には、文書VQAにおける推論効率化、専門性の高いESGドメインでのFew-shot推論、ならびにGENIAC支援による文書レイアウト解析モデルの学習手法について発表しました。以下に、当日発表した3件の研究の概要をご紹介します。
[S5-P18] 文書VQAにおける画像拡大ツールを用いた推論の性能・コスト分析
本研究は、文書画像に対する質疑応答(文書VQA)において、推論時のトークン効率と高い精度の両立を目指した取り組みです。人間が細かい文字を読む際に必要な箇所だけを注視して見るように、VLMが低解像度画像に対して「画像拡大ツール」を適用し、トークン消費を抑えながら的確に回答を導き出せるかを検証しました。実験を通じて、拡大ツールの使用による一定の精度向上は確認されました。しかし、入力画像の解像度低下に伴う性能劣化を完全には補いきれないことが分かりました。推論過程では、不要な箇所を何度も拡大したり、文字が読めているにもかかわらず無関係な場所をさらに拡大してしまうといった非効率な挙動が多数みられました。こうした要因として、既存のVLMには低解像度画像から情報のある場所を推測する構造理解力と、文字が読めるかを判定する能力が不足している可能性が分かりました。今後は、頂いたフィードバックを元に、低解像度での構造理解力と可読性の認識能力を獲得するための学習手法を探索し、トークン効率と高い精度の両立を目指します。本テーマに興味のある方がいましたら、インターンの応募お待ちしております。

[S4-P36] SASB項目一致事例を用いたFew-shot推論の効果検証
本研究は、専門知識を要するESG報告書の査読業務において、限られた訓練データから高い判定精度を引き出すための手法を検証した取り組みです。報告書の記述がSASB基準(※)を満たしているかを判定するタスクを用い、LLMに対する効果的な事例提示のあり方を分析しました。実験を通して、評価項目が一致する事例を優先的に選出する手法や、事前推論時の誤りに対する反省情報を合わせて提示するアプローチが、精度の改善に寄与することが分かりました。複雑な文書解析タスクにおいても、事例の選び方と情報の持たせ方を工夫することで、モデルの推論性能を効果的に引き出せる可能性が示されました。ただし、今回のテストデータは各言語200件程度と限定的でした。今後はより大規模なデータでの再評価や、異なる言語間での効果検証を進めていく予定です。
(※)SASB基準(Sustainability Accounting Standards Board):企業が投資家に向けてサステナビリティ(ESG)に関する情報を開示する際の持続可能性会計基準。

[S2-P19] 文書レイアウト解析モデルのEnd-to-End学習における損失関数切り替えの効果
本モデルの開発は、経済産業省とNEDOが実施する、国内の生成AIの開発力強化・社会実装を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」の支援を受けて実施したものです。
本研究では、文書レイアウト解析モデルをフルスクラッチでEnd-to-End学習させるにあたり、どのような学習プロセスが精度向上に寄与するのかを検証しました。モデルが何も学習していない初期段階では、まず大まかなレイアウト構造や読み順を把握する粗粒度な損失関数で学習させます。その後、領域境界の微調整や局所的な関係性を厳密に捉える細粒度な損失関数へと段階的に切り替える、カリキュラム学習のアプローチを試みました。実験の結果、今回の構成では途中で損失関数を切り替えることによる精度向上は示せませんでした。しかし、粗粒度な損失関数がもつ構造的頑健性を確認できました。今後は損失関数の定義や切り替えスケジュールの設計を見直し、より効果的な学習手法の確立を目指します。

スポンサー賞
弊社からは、「[S4-P48] 牛舎内音声を用いた教師なし異常検知手法の検討」へスポンサー賞を授与させていただきました。副賞として「Shokz オープンイヤー イヤホン OpenFit Pro」を贈らせていただきました。今後の研究活動も応援しています!
【受賞理由】 本研究は、少人数で多頭数の家畜を管理する現場課題に対し、牛舎内音声による非接触型モニタリングを提案しています。約2,100時間に及ぶ実環境データを自ら収集し、鳴き声の抽出とアノテーション、環境音と鳴き声の幅広い分析を丹念に進めた点を高く評価しました。動物福祉と持続可能な畜産に資する取り組みが弊社の理念とも合致することから、シェルパ・アンド・カンパニー賞に選定しました。

おわりに
YANS2026への参加を通じて、多くの研究に触れられたこと、そして同世代の皆さんと直接交流できたことが何よりの収穫でした。「年に数回は開催してほしい!」と思うほど、学びと熱気に満ちた2日間でした。
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社では、ソフトウェアエンジニアおよびエンジニアリングインターンを募集しています。現在弊社ではNLP領域に加え、文書解析やVLM技術にも注力しています。興味ある方の応募をお待ちしております。